HSPという概念を知ることで、「人生が苦しい原因はHSPの気質のせいだったんだ…」と長年の謎が解かれた感覚になり、安心感を覚える方も多いのではないでしょうか。また、「自分はHSPなのかな?」と当てはまるかどうかまだ分からないという方も多いと思います。
私は3年前に、HSPという概念を知り、そこからあらゆるサイトや本で勉強しました。そこで気づいたことは、HSPで苦しんでいる方は想像以上に多いということです。
この記事を読めば、自分を受け入れることや、同じような人もいるんだという安心感につながると思います。また、HSPさんが苦しみがちな日常生活の具体エピソードに合わせて、生きやすくなる対処法も記載していますので、ぜひ最後までお読みください。
HSPの特徴とは?
HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略語で、直訳すると「非常に繊細な人」という意味です。アメリカの臨床心理学者エレイン・アーロン先生が、1996年に出版した本の中で初めて使用されたといいます。
日本でも「繊細さん」という言葉でいろんな本が出ているし、最近は「私はHSPです」と自らおっしゃる方も多くなりました。
人よりも五感が鋭く、脳神経が過敏に反応することで、周囲からの刺激をより敏感に感じ取ってしまう特性があります。それは、4つの特徴のアルファベット頭文字をとって、「DOES(ダズ)」と言われています。
・Depth of Processing:考え方が複雑で物事を深く考えて処理をする
・Overstimulation:過剰に刺激を受けやすく、敏感で疲れやすい
・Emotional Reactivity and High Empathy:共感的・感情的な反応が高まりやすい
・Sensitivity to Subtleties:些細な刺激にも気が付きやすい
実は、全人口の約15~20%、5人に1人はHSP気質であると考えられています。感じ方や感じる程度は人それぞれではありますが、HSP気質で悩んでいる方は想像以上に多いなと思いました。
HSP特徴12個と具体エピソード
私はHSPの概念を3年前に知りました。知人に、「いく(私)ってHSPなんじゃない?」と言われ、その単語の意味さえ知らなかった私は、その日の夜にHSPについて調べました。
HSPについて調べていた時、とても救われた気持ちになったんです。「あぁ、こんな思いをして生きているのは私だけじゃないんだ」と安心したことを覚えています。私だけが変だ、私のメンタルが弱すぎるんだ、おかしいんだと苦しかった日々が、少し報われた気にもなりました。
ここから、私の場合のHSPに当てはまる特徴を12個書き出してみます。
①他者の感情や意図が分かる
表情を見たり少し話したりすると、その人の感情や意図が分かります。もしくは、その人から直接聞いたこと以上に、その奥の要望や感情を想像したり考えたりします。
そのため、良い時は話が弾んだりとても感謝されたりしますが、悪い時は考えすぎて疲れたり、勝手に傷ついたり落ち込んだりしてしまいます。
②勘がよく当たる
家族関係では、パートナーの姿をみて「なんとなく今日疲れていそうだな」と察し、疲れが取れそうな晩ごはんのメニューにすると、予想的中で喜ばれることがあります。
友人関係では、「あの人とあの人、近々お付き合いしそうだな」と思えば、数ヶ月後に本当に付き合っていることがよくあります。小学生の頃からこのような勘はよく当たっていて、大人になった今でもなぜか当たります。
職場では、「あの人時期に昇格しそうだな」とか「退職しそうだな」と思っていると、本当にそうなることがあります。そこまで距離が近くなくて、事情を全く知らない時でも、一緒に仕事をしたことがありその人の性格や思考がある程度分かっていれば、当たることがよくあります。
③嘘やお世辞が分かる
他者の視線やいつもと態度が違うことに、とても敏感に反応します。「無理して元気なフリをしているな」とか、「私を喜ばせようとして、無理に美味しいフリしているな」などに雰囲気で気付いてしまいます。
良く言えば、言葉をそのまま受け取らずに本質的に考えられるという点がありますが、悪く言えば、物事を疑いすぎてどんな言葉もそのまま受け入れられないという点があります。
④他者の些細な言動で傷つく
例え自分を評価するような言動でなくても、いじわるではなくほんの些細なコミュニケーションであっても、大きく傷つくことがあります。
盛り上がると思って発言したことがスルーされた時や、会話の中での自分の意見や感想に対して「そんな訳ないじゃん」というちょっとした否定をされた時も、傷ついてしまうといった具合です。
相手にとってはただのコミュニケーションで、そこに深い意味はないはずですが、それ以上に重く受け止めてしまうのです。
⑤他者が怒られている姿も見たくない
職場を想定して、自分が怒られた時はもちろんつらいし落ち込むけれど、自分以外の誰かが怒られていたりミスを指摘されていたり、職場の空気全体が不穏になっていたりするだけで、とても居心地が悪く感じます。
自分には関係ないことであっても、そのような場面に遭遇するだけで、仕事のパフォーマンスが下がったり、その場に居られなくなって抜け出したくなったりします。
⑥人混みや集団行動が苦手
集団行動と言えば、学生時代を思い浮かべます。毎日同じ時間に登校し下校すること、毎日”学校”という同じコミュニティで過ごすこと、修学旅行などの泊まりがけの行事では、一瞬足りとも自分の時間が取れないことが、非常に苦手でした。
大人になれば世界が広がり、自由な時間は増えましたが、会社勤めをしていると毎日同じコミュニティで過ごすことには変わりないし、学生時代以上に”責任”や”協調性”が求められ、重荷が増えている気がします。
また、都会に住んでいるとどこに行っても人だらけです。沢山の人がいる場所に居ること自体も、息苦しくて苦手です。
⑦人と別れた瞬間どっと疲れる
人と話すことは好きですが、別れたらとても疲れます。もちろんどんな人と話すことも好きという訳ではなく、自分が心を許せる人たちや、何か共通の目的があってその議論をできる人たちと居ることが好きです。
ただし、そのような人と居る時でさえ、長時間となると疲れてしまい、別れた瞬間にどっと疲れます。もうしばらく会わなくてもいいかなという感情になることもあります。
⑧一人行動が好き
⑦で挙げたように気の許せる人と居ることは好きですが、一人の時間も好きです。図書館やカフェはもちろん、買い物や旅行も一人で行きます。
ずっと一人で居ることは寂しいですが、一人のメリットとしては気を遣うことがないし、一緒に居る相手が喜んでくれるかどうかは一切気にせず、自分が喜ぶかどうかに100%焦点を当てて行動できるので、本当に気楽です。
⑨感情移入しやすい
一緒にいる人の嬉しい話やつらい話を聞いている時や、映画を観ている時に、その人の状況と自分を勝手に重ね合わせて、同じように嬉しい気持ちになったりつらい気持ちになったりします。時には、涙を流しながら話を聴いていることもあります。
そのため、共感性が高いとよく言われます。「よし!今から感情移入するぞ!」と思ってそうしている訳ではなく、話を聴いているといつの間にか感情移入してしまっているのです。
⑩人に見られると集中できない
仕事をしている時はその典型です。オフィスで沢山の人に囲まれながら仕事をしていると、人に見られていると勝手に感じてしまい、集中できません。反対に、在宅勤務で一人の空間で仕事をしていると、そのストレスが全くないので作業がとても捗ります。
また、周りの話し声や雑音も気になって集中できないため、勉強するならカフェよりも図書館の方が集中できます。
⑪苦手な音が多い
ドアのバタンという音、パトカーや救急車のサイレンの音、時計の針の音、黒板を爪で引っ掻く音など、苦手な音が多いです。また、音が多い空間だと居心地の悪さを感じてしまいます。
そのため、音のするものはできるだけ身の回りからなくし、ドアや窓を閉め切っていることが多いです。
⑫暴力シーンが苦手
映画やドラマの暴力シーンに加え、画像など静止画での暴力画も苦手です。また、アクション映画や医療ドラマなども苦手です。
幼い頃は家族がそのようなドラマをテレビで見ていることも多く、決まって自分の部屋に避難していました。現在は夫と2人暮らしですが、私の事情を理解してくれているため、一緒にいる時に暴力シーンがあるものは見ません。夫がスマホで音出しで見ている場合も、音しか聞こえないものも苦手なので、イヤホンをしてもらうようにしています。
HSPの特徴への対処法
HSPさんは、生活する中での至る所にストレスポイントがあり、些細なことでもどっと疲れてしまいます。HSPの特徴を理解できると安心感にはつながりますが、とは言え毎日のストレス減にはつながりません。
ここからは、HSPさんの苦しい特徴に、日々どのように対処していけば良いのかをお話ししていきます。
対処法❶苦手なものは罪悪感なく避ける
HSPさんは真面目な方が多いので、苦手なことにも向き合って解消しないといけないと感じている方も多いと思います。
頑張って色んなタイプの人とコミュニケーション取れるようにならないと!とか、集団行動の苦手を克服するため、頑張って大人数の飲み会に参加してみよう!など、克服しようとしてしまいます。
しかし、克服できる苦手とできない苦手があります。つらい思いをしているHSPさんは、おそらくこれまでも何度も克服しようと思って頑張ってきたのだと思います。その自分を褒め、次は苦手なものを罪悪感なく避けてもいいんだと自分を受け入れましょう。
対処法❷他者に期待をしない
他者の言動に傷つくHSPさんは、いろんなものに先回りして想像できるため、自分の想像通りにならなかった時に落ち込み、傷つくことが多いです。
例えば、盛り上がると思って発言する時、発言する瞬間に盛り上がった時の光景まで想像できてしまいます。会話の中で自分の意見や感想を伝えた時、伝える瞬間に相手の反応まで想像してしまいます。
だからこそ、自分の想像と違った時にダメージが大きくなるのです。他者に期待をせず、例え相手の言動に自分が納得できない時でも、「そんなもんだ」と思えるように想像しすぎないことが大切です。
対処法❸客観的に考え直してみる
相手の言動に傷つく時、頭が真っ白になり、つらい、寂しいなどのネガティブな感情が先行してしまいます。そのような時は、状況を客観的に捉えられていないことがほとんどです。
主観ではなく客観的にその状況を思い返してみると、相手は自分を傷つけようと思ってそのような発言をした訳ではないことや、むしろ良かれと思ってそのような行動を取ってくれたのだと理解できるかもしれません。
人とのコミュニケーションの中でつらい時や苦しい時は、まずは一歩下がって状況を客観的に見つめ直し、今の自分の解釈は適切なのか、考え直すと心が軽くなります。
最後に〜実はHSPが役に立つこともある〜
ここまで、HSPの12個の特徴と具体エピソードについて、そして、日常でどのように対処していけばいいのかをお話ししてきました。ただ、ここで思い出してみてほしいことがあります。
生活の中で、HSPの気質が役に立ったこともありませんか?きっと、多くのHSPさんは友人や他人のことを自然と思いやれるため、感謝されることもあるし、仕事で役立つこともあると思います。
悩み相談をしてくれた友人が、”寄り添ってくれている、分かってくれている”と感じ、相談を終えた後には”救われた”という言葉をもらうこともあります。
”自分の良い所を探すこと”は、HSPさんにとっては不得意な分野かもしれませんが、つらい時にまずはつらい気持ちでいるありのままの自分を受け入れつつ、HSPの特徴が少しでも生きていく中で役に立ったことを、思い出してみませんか?